ガス圧接の歴史
ガス圧接 黎明期
初期の鉄筋コンクリート造の建物では、主に重ね継手が使われていました。
重ね継手とは鉄筋の端同士を一定の長さ重ねあわせて繋げるものです。
大規模な鉄筋コンクリートの構造物がつくられるようになると、
鉄筋が太くなり、より多くの本数が使われるようになりました。
すると、重ね継手のデメリットが露呈するようになります。
「鉄筋が重なる部分にコンクリートが充填しにくい」、
「コンクリートが割れると鉄筋が接合する力がなくなってしまう」などの理由です。
そのため鉄筋を直接継ぐ工法が必要となったのです。
ガス圧接技術の確立
ガス圧接は1939年にアメリカで鉄道レールを
接合をするために使用されたのが最初と言われてます。
ほぼ同時期に南満州鉄道株式会社の技術研究所で
丸鋼棒のガス圧接実験が行われました。
その後この研究は1940年代後半から、鉄道レールの接合を目的として
日本国有鉄道技術研究所に引き継がれました。
大規模な鉄筋コンクリート造の建物が建てられるようになり、
重ね継手に代わる鉄筋を直接継ぐ工法が必要になると、
鉄道のレールを繋ぐための工法であったガス圧接が鉄筋の継手に応用されました。
1952年10月、地下鉄渋谷車庫土留め擁壁工事で
直径19mm~25mmの鉄筋の継手にガス圧接施工が行われました。
これが日本初、実工事でのガス圧接施工でした。
1955年以降、ガス圧接は日本以外の国で使われなくなります。
その理由は、良い材料を用いて正しくガス圧接された継手は
母材とほとんど同じ強度を示すのに、不良なガス圧接継手は全く強度が出ず、
しかも外観だけでは良否の違いが判らないためでした。
また、当時の未熟な品質検査技術では継手品質の良否が的確に判断することができなかったのです。
そのため、日本以外の他国では電気的溶接
(アーク溶接やフラッシュバッド溶接)などが代わりに用いられました。
唯一、日本においてはガス圧接工法の検査方法や
品質向上のための研究開発が積極的に行われたため独自に発達していったのです。
1963年に日本圧接協会が設立。
「手動ガス圧接技量資格制度」が設けられました。
また、1965年に日本圧接協会から「鉄筋のガス圧接標準仕様書」が
発行されたことでガス圧接の技術はひとまず完成したことになります。
ガス圧接の転機
1995年7月1日の阪神淡路大震災で多くの鉄筋コンクリート造の建築物が破損しました。
その原因を追究する過程でガス圧接継手が破断していることが判明したのです。
『ガス圧接継手は地震のような高速荷重には耐えられないのではないか?』という懸念が出ました。
そこでガス圧接継手の耐震性評価方法として高速載荷試験を実施しました。
結果は、適正な条件で圧接された継手は地震荷重に耐えられるという評価でした。
破断しにくい高品質な継手には、適切な圧接施工を行うこと、
品質管理、作業者の教育訓練が重要であるということが証明されたのです。
ガス圧接のシェア
鉄筋継手の主流はガス圧接継手で全体の約70%(2017年時点)を占めています。
ガス圧接継手の他にも、溶接継手、機械式継手などの技術開発が積極的に行われていますが、
ガス圧接に比べると高価であったり扱いが難しいものが多いのが現状です。
ガス圧接工法のなかでも5種類に分かれますが、
現在施工されている工法の約90%は「手動ガス圧接」によるものです。
まとめ
ガス圧接は地震の多い日本で独自に発達した、日本が誇るべき技術です。
近年は、諸外国でもガス圧接が採用されていますが、これらは全て日本から導入されたものです。
巨大な建造物をつくるために、1本1本、人の手で鉄筋が繋がれています。
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